蔡 峻

◆経歴
◆◆「蔡峻ー強靱な批判精神、孤高の人」文 宋真一

経歴

1926生
[個展]1972より6回
1997 個展/銀座アートギャラリー
[近年の主なグループ展]
1992 JARAビエンナ-レ展/ 東京都美術館
1993 KOREA統一美術展/ 東京セントラル美術館
1998 在日KOREAN中央美術展/ 福岡市美術館
1999 アルン展-在日コリアン美術展/ 京都市美術館
2000 在日の人権展/ 韓国 光州市美術館
2001 第53回 沖展 招待出品/ 沖縄           
2002 2002 アルン展/京都
2002 第4回 光州ビエンナ−レ Koreans in the Diaspors / 韓国 光州
[パブリックコレクション]光州市美術館/韓国
[図録]蔡峻風刺画集ほか
東京都東村山市在住

  蔡峻ー強靱な批判精神、孤高の人」文 宋真一

 

 蔡峻は在日1世美術家の中で最も重要な一人である。
 その作品は卓抜な造形力と想像力でとても1926年生とは思えない作品を作り続けている。
 彼は若い頃は画家を目指したが生活のために始めた漫画によってその才能を開花させ研ぎ澄ませてきた。特に長く新聞に連載された政治風刺漫画は読者に風刺の面白みを伝えただけにとどまらずその印象深い独特な造形と鋭い批判精神で堪能させた。その漫画は日本人漫画家の中でも評価が高く手塚治虫なども絶賛している。
 
 漫画と平行して絵画作品の創作もおこなってきたが二つの仕事は相互に良い刺激を与え続け巨大で孤高な画家を誕生させた。
 それは日本の美術界にも韓国にも例を見ない作家となった。
 こういう作家を生むことは在日コリアンの美術界の特徴的なことと言えよう。
日本社会の民族差別、社会的抑圧、冷戦構造下の母国の分断と代理戦争のような同胞社会の対立は在日同胞の世界観、人生観に深刻な影響を与えた。それは自分が居る状況ー様々な力や流れから覚醒した視線、視野、視力を養うことになった。独自の批判精神に裏打ちされた作家達を誕生させる背景となった。
 蔡峻の出品作【 故郷を捨てて 】1997年作 oil painting は自分の記憶に残る母親の姿である。
彼はこの数年自己の記憶をたどる作品を立て続けに描いてきた。その中の一作である。
この作品は比較的穏やかな作品であるが老年に至り自己の思い出を絵にしたという凡庸なものではない。連なる作品を見ると分かるが自己の生い立ち、家族の生活、民族の歩んだ足跡を愛情ある眼差しと冷静な批判精神で振り返ったものである。
 家族の記憶は民族の記憶であろう。タイトルの「捨てて」というところに作者の苦い心を読みとれる。
 同じく出品作【 ビー玉 】2001年作 oil painting は本来のこの作家のフィールドに戻った作品である。若い女性の姿は同胞でありコリアンであり時として自己も含めたこの時代を生きる人々の象徴である。ビー玉は硝子で作られた玉で子供の遊具である。日本ではよく真実を見分ける事の出来ない人に「君の目は硝子玉か?」などという。
 この絵は批判精神を失った現代人への痛烈なアイロニーと受け取ることが出来よう。だからといって残酷な絵にしないところがこの作家の限りない人間への愛情を感じられるところである。
 蔡峻の風刺漫画制作と絵画制作は別々ではない。両方とも密接に結びつき、作家は巨人となった。
風刺漫画としての批判精神の強靱さは言うまでもないが、見落としてはならないのは、その”線”である。描線の強さ、確かさである。実に厳しく鋭くそしてユーモラスに描かれる線は、通俗に陥らないエスプリとともに造形され、彼の独自の世界を築いている。
彼の絵画は、漫画制作の過程に鍛えられた”線”を骨格として成り立っている。
絵画の中に生きている線を発見するのも彼の絵画作品を見る楽しみでもある。
    
美術評論家 宋真一

 

 
 
 
 
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02/07/14

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