■■■■ ディアスポラ/アート研究会 第1回研究シンポジウム ■■■■
―2002年光州ビエンナーレ「There−コリアン・ディアスポラ」展を振り返る」


 来る3月8日、「ディアスポラ/アート研究会」は第一回シンポジウムを開き
ます。今回は、2002年光州ビエンナーレにおける「There−−コリアン・ディ
アスポラ」展を振り返り、それが残した問題点を洗い出す中から、「ディアス
ポラ/アート研究会」の今後の方向性を展望しようとする試みです。
 同展の出品作家である嶋田美子、皇甫康子(ファンボ・カンヂャ)、尹煕倉
(ユン・ヒチャン)、盧興錫(ロ・フンソク)が自作解説をかねた報告を行な
い、さらに、北原恵(表象文化論)、鄭暎惠(チョン・ヨンヘ、社会学)、
君塚仁彦(博物館学)、池内靖子(演劇論)など、多様な分野の人々が議論に
介入します。
全体の司会と進行は、徐京植(ソ・キョンシク、作家)がつとめる予定です。
詳細は以下をご覧ください。みなさまのご参加をお待ちしています。


■目次
 ○3月8日「第一回 ディアスポラ/アート研究会」のお知らせ
 ○会の発足にあたって

======== 1 研究会のお知らせ ============

■日時・場所

 2003年3月8日(土)14:00開始ー18:00終了予定
 (シンポジウムのあと交流会の予定)

 東京経済大学、6号館F307教室
  (東京経済大: JR中央線「国分寺」下車、南口より徒歩15分。
   タクシー1メーター。バスの便なし)
   6号館は水色の外壁の高い建物、F307はその3階です。
   交通アクセスは、http://www.tku.ac.jp/~koho/access/kokubunji.html

■研究会のスケジュール 14:00〜18:00

 司会 :徐京植(ソ・キョンシク、在日朝鮮人2世、作家) 
  ○イントロ:北原恵(表象文化論・美術史研究者)
       「(光州ビエンナーレの概要や、There展の位置づけ)」
  ○報告1:嶋田美子(アーティスト)
       &皇甫康子(ファンボ・カンヂャ、在日朝鮮人2.5世)
       「共同製作、「『在日』の家族写真」について」
  ○報告2:尹煕倉(ユン・ヒチャン、美術家)
       「光州ビエンナーレに参加して」
  ○報告3:盧興錫(ロ・フンソク、在日コリアン2世、
彫刻家、AREUM Art Network事務局長)
       「在日コリアン美術の一系譜」

  ○コメンテーター:君塚仁彦(植民地博物館論・博物館学)
           鄭暎惠(日本の重たい空気と格闘している社会学教員)
           池内靖子(演劇論・ジェンダー論)
  ○議論
 
  


=============== 2 ================

■「ディアスポラ/アート研究会」の発足にあたって
                  ――――――――――――――――
                           徐 京植

 私たちは、「「ディアスポラ/アート研究会」という名称に、1,「ディアスポ
ラが制作したアートの研究」、2,「ディアスポラを主題にしたアートの研究」、
3,「ディアスポラが行なうアート研究」といった、重層的な三つの領域を示す概
念を含めている。
 「ディアスポラ」とは一般的には「離散の民」を意味するが、ここではとくに
「難民の時代」とも言われる現代のディアスポラを念頭に置いている。現在、統
計上だけでも約1億5千万人、いわゆる「非合法移民」を合わせると約2億5千
万人以上の人々がディアスポラとなって地球上を流動しているといわれる。これ
らの人々は、19世紀から20世紀を貫いて現在にいたる時代に、植民地主義、
世界戦争、冷戦、市場経済グローバリズムなどによって、本来帰属していた共同
体から引き剥がされた。現代のディアスポラは「故郷」「国土」「言語」「宗教」
「文化」「歴史(物語)」「法」など、近代人のセルフ・アイデンティティを下
支えしていた諸領域を超えて流浪している。そうした流浪はまた、近代において
自明視されてきたこのような諸観念そのものを絶えず脱構築する営みともなる。
現代のディアスポラはその流浪する先々で、自らの祖先のそれとは異なる言語や
文化に遭遇し、ある時はそれと融合し、ある時は抗争する。そのセルフ・アイデ
ンティティは当然、さまざまな揺らぎや分裂にみまわれることになる。「自分は
何ものであるのか?」という問いは、この人々にとっては日常的なものである。
「人間とは何であるのか?」という絶えざる問いの源泉ともなるその問いは、近
代以後を生きる人間一般の生の条件を問い直す普遍性を内包しているのである。
 ディアスポラによる文化的および思想的創造は、ただちには言語化されず言説
化されえない。なぜならばこうした創造は従来の言語や言説あるいは学術などの
諸領域を超えて、あるいはそれらのはざまに芽生えるのであり、それら個々の領
域の枠内に収まらないからである。ディアスポラにとっては、どの場所で、誰に
向かって、どの言語で、といった記述行為、表現行為の基本的諸条件そのものが
自明ではない。したがって、この人々をめぐって起きている文化的・思想的出来
事はしばしば、身体表現を含む広義のアートという形をとって表出するのである。
 2001年のヴェネチア・ビエンナーレ、2002年の韓国・光州ビエンナーレ、ドイ
ツ・カッセルのドクメンタ11など最近の主要な国際美術展において、ポストコ
ロニアルの視点から同時代的諸問題に鋭く切り込むディアスポラ/アートがきわ
めて多く出品されている。これら抜きにはもはや現代アートは成立しえないとい
っても過言でない。しかしながら、日本においては、ディアスポラ/アートに関
するまとまった研究が存在しない現状である。ここに、私たちが「ディアスポラ
/アート研究」を志向する理由がある。
 最初に私たちが目指そうとするのは、コリアン・ディアスポラ/アート研究で
ある。
 朝鮮民族は19世紀末の列強による侵略、日本による植民地支配、さらに南北分
断と冷戦体制という歴史を経てきた結果、日本、中国、旧ソ連の中央アジア諸国、
アメリカ合州国、ブラジルなどの各地に総計およそ500万人が離散したといわれ
る。コリアン・ディアスポラの過去・現在・未来には日本国および日本人が深く
関わっている。したがってコリアン・ディアスポラ/アート研究から見えてくる
ものは、日本自身の過去・現在・未来でもあるはずである。つまり、日本という
場で、日本人と在日コリアン・ディアスポラとが協働して行なうディアスポラ/
アート研究は、不可避的に、両者が自らを問い、自らを開き、自らを変えていく
営みとなるであろう。ここに、在米コリアンなど他地域のコリアン・ディアスポ
ラ、そしてさらにさまざまに異なるバックグラウンドをもつアーティストや研究
者たちが介入し協働することによって、より豊かな成果を上げることが期待でき
る。
 一昨年の《9・11》以降、世界は「対テロ戦争」モードに突入している。アメ
リカのイラクへの軍事攻撃が切迫している。ブッシュ大統領が北朝鮮を「悪の枢
軸」と名指し、これに北朝鮮が強く反発していることから、東アジアにおいても
戦争の危機は高まっている。昨年の《9・17》、小泉首相のピョンヤン訪問以降、
拉致事件を契機に日本国内における嵐のような北朝鮮バッシングの結果、在日コ
リアン・ディアスポラの生存と生活は脅威にさらされている。《9・11》以降、
現在まで繰り広げられているのは、「表象の戦争」とも呼ぶべき事態である。人
々の脳裏に、「アラブ人」「イスラム教徒」「朝鮮人」などを危険極まりなく得
体の知れない怪物として描き出し、「対テロ」戦争へと人々を駆り立てるため、
映像をはじめ、あらゆる「表象文化」が国家によって動員されている。国家は戦
争行為を行なうにあたって、人々を「われわれ=自国民」と「やつら=敵国人」と
に暴力的に二分しようとする。こうした単純で乱暴な二分法を大衆の心に浸透さ
せるため表象文化が駆使されることになる。ここでも危険にさらされ、真っ先に
被害を被るのはディアスポラたちである。また戦争は、新たなディアスポラを産
み出しもする。
 現在がこのような時代であるからこそ、私たちは「ディアスポラ/アート研究」
を通じて、国家や多国籍企業による表象の暴力に対抗し、戦争文化に抵抗し、他
者との共存や連帯の可能性を探っていかなければならないと信じている。

************************************************************************

皆さまのご参加をお待ちしています。

◇――――――――――――――――――――――――――――――――――◇
| ■「ディアスポラ/アート研究会」連絡先              |
|  ○徐京植研究室気付                       |
|    〒185-8502 東京都国分寺市南町1-7-34           |
|     東京経済大学 現代法学部                 |
|  ○メールでのお問い合わせは                   |
|     diaspora_art@egroups.co.jp                |
◇――――――――――――――――――――――――――――――――――◇

 

 

ゥ2002 Areum Art Network. All rights reserved.